園長先生のコラム

コラム 【 2018年12月号 】 「 待ちに待った星 」

今年も12月2日の日曜日から「アドベント」(降臨節、待降節)が始まります。
教会暦では、4つの日曜日を待つと、その週にクリスマス=25日を迎えることになります。本年は12月23日が降臨節第4主日(日曜日)で、イヴ(前宵)が24日、そして降誕日(クリスマス)が25日となります。

昔からアドベントカレンダーなどを作って毎日クリスマスに向けてカウントダウンしていくのが慣習となっています。待ち遠しいクリスマスです。
でも起源から考えると、今月の聖句でも少し述べましたが、ユダヤの人々は、紀元前586年のバビロン捕囚から500年以上も救い主の誕生を待ち望んでいたのでした。
旧約聖書の記述から歴史的にことに預言者の登場から考えてみますと、壮大な歴史絵巻を想像できます。
嘆きの預言者エレミヤは、このバビロン捕囚の頃の預言者です。
南ユダの残った人々は、北のサマリヤの地方に身を寄せます。サマリヤには、北イスラエル王朝の頃の神殿跡がありました。民はその神殿跡への巡礼に望みをかけます。
ユダの地(イスラエル)は、どんどん荒廃してゆきます。バビロニア王国に陰りが見え始めます。
イザヤと言う預言書は、少なくとも時代の違う3部の構成があるといわれますが、第二イザヤと呼ばれる預言者の時代と思われます。
そして、ついに紀元前539年ペルシャのクロス王が、バビロニア帝国を滅ぼし、捕囚民の帰国を赦す勅令が発せられます。一部の民(シェシュツァルの一行)がイスラエルに帰郷し、かつての神殿跡に祭壇の基礎をおきます。
この頃は、第三イザヤの時代と推測されます。
そして紀元前520~515年頃、第2神殿が完成します。ユダヤでは預言者が次々登場します。ハガイやゼカリヤ、オバデヤ、そしてマラキです。ユダヤに救い主(メシヤ、キリスト)の誕生を待望する思想がどんどん膨らんでいきます。
時代とともに旧約聖書の律法が完成してきます。
紀元前398年頃、律法が正典化されたと思われます。
エジプトのプトレマイオス王朝に続き、アレキサンダー大王による世界制覇の時代を経て、ヘレニズム化(ギリシャ文化と地元の文化の融合)の進行がありました。上級の祭司や地主など実権を握る者が、このヘレニズム化を歓迎したのです。紀元前2世紀頃はヘレニストに対しての戦い(マカバイの乱)などがあった時代であり、なおも救い主(メシア、キリスト)が生まれ来るという思想はますます強くなります。その後はローマ帝国の支配の時代がやってきます。紀元前63年頃と言われています。
そしてついにその日がやってきました。
救い主がお生まれになるしるしの超新星が、空に輝いたのです。
多くの預言者が、その救い主の誕生を預言していた通りでした。
東方の3人の博士(カスパール、メルキオール、バルタザール)は、西方に光輝くその星を頼りに遠い旅に出たのでした。
実にバビロン捕囚から数えると、596年も待ち続けたしるしの星だったのです。

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・・ 年主題聖句 ・・

「愛する者たち、神がこのようにわたしたちを愛されたのですから、わたしたちも互いに愛し合うべきです。」
~ ヨハネの手紙Ⅰ 4章11節 ~

聖書の愛という言葉には2種類あります。「神の愛」「人間の愛」前者はアガペー(ギリシャ語)、後者をエロス(ギリシャ語)神の愛は見返りを求めない、只々一方的に与え続ける愛を指します。後者の人間の愛も決して悪い愛ではないのですが、見返りを求めてしまう人間らしさを持った愛です。だから失恋したときなど心に痛手を受けますよね。神の愛は人間の中にも存在します。わが子を思う親の愛などは見返りを求めていません。愛された子どもは人を愛することができます。私たち人間はすでに神さまから愛されているのですから、互いに愛し合うことができるはず、とヨハネは言っているのです。

・・ 聖句と今月のみことば ・・

「学者たちはその星を見て喜びにあふれた。」
~ マタイによる福音書2章10節 ~

紀元前586年、南ユダ王国の首都エルサレムが大国バビロニア陥落しました。ソロモンが建てた神殿は破壊され、ゼデキア王は子どもたちと王妃を殺されるのを見せられた後、両眼をつぶされ処刑されました。主要な住民がバビロンに連れて行かれます。有名なバビロン捕囚です。その後、紀元前539年、ペルシャのクロス王がバビロニアを滅ぼし、ユダヤ人の開放の勅令を発します。しかし、ユダヤ人には帰る国がありません。ある者はかつてのユダの地に帰りますが、そのままペルシャに残る者も多くいました。500年もの間、ユダヤ民族にとっての本当の解放者、王の中の王の誕生を待つ思想が育って行ったのです。

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